見つめつづける。
聞きつづける。
感じつづける。
学びつづける。
問いつづける。
迷いつづける。
試しつづける。
挑みつづける。
伝えつづける。
つくりつづける。
美はつづく。
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人との出会いから始まるものづくりは
予測不能だから面白い。

亀山達矢

KAMEYAMA Tatsuya

tupera tupera

今年(2026年)9月に武蔵野美術大学美術館で展覧会「MIX WORKS——tupera tuperaの仕事 2002–2026」を予定されていますね。

これまでも絵本の原画展をはじめ、全国の美術館でさまざまな展覧会を開いてきましたが、今回の展覧会は僕らの活動25周年目の “ベスト盤” みたいなものになると思います。絵本の原画やイラストレーション、アートディレクションを担当した仕事もかなりの量になるので、どうやってまとめるかヒーヒー言ってますけど(笑)

絵本制作とともに、全国各地で展覧会やワークショップなども行っている。写真は「顔」にちなんだtupera tuperaの絵本原画や立体、映像作品などを揃えた参加・体験型の展覧会「tupera tuperaのかおてん.」。2020年から4年間かけて全国8カ所を巡回した
絵本制作とともに、全国各地で展覧会やワークショップなども行っている。写真は「顔」にちなんだtupera tuperaの絵本原画や立体、映像作品などを揃えた参加・体験型の展覧会「tupera tuperaのかおてん.」。2020年から4年間かけて全国8カ所を巡回した

実は展覧会に合わせて、ムサビ発の絵本の出版レーベルも準備しているんです。「ムササビブックス」という名前で。

絵本のレーベル、ですか?

絵本作家に限らず、いろんな分野のムサビ出身者が絵本をつくれるレーベルで、「ミックス」をテーマとしています。というのも、僕らは絵本や絵本以外の仕事をしているときも、「みんなでものづくりをしている」という感覚を大事にしているんですね。

共同作業と言うと演劇やテレビ番組などがわかりやすいけれど、絵本だって絵本作家だけではなく、編集者、デザイナー、製本をする人、印刷をする人と、たくさんの人の力で出来上がっています。だからムササビブックスは、みんながもっとコラボレーションを楽しみ、これまでにない新たな絵本を生み出すレーベルに育っていけばいいなと思っています。

ちょうど今、第1弾を制作中で。グラフィックアーツ専攻の学生60人と、グラフィックアーツ研究室、編集者、製本所、さまざまな方の力を合わせて、妖怪をテーマに、A2サイズの大きな3分割絵本をつくっているところなんです。

別々にページをめくれるしかけ絵本のようなものでしょうか?

そうですね。ページが上・中・下に分かれているので、好きなようにページをめくって、みんなの作品を組み合わせられます。

そうやって「版種」と「個性」がミックスされたらどうなるか。版画の長い歴史の中で異なる版種の作品がシャッフルされることってあまりなかったと思うし、「アニメっぽい絵✕リアルな絵✕ポップな絵」というふうに作者の個性もまぜこぜになったら、めちゃくちゃ面白いものになるんじゃないかと思っています。

先生や助手さんにも声をかけて、僕もムサビを卒業して以来、20数年振りに銅版工房で作品をつくりました。絵本のタイトルは「MIX MIX」。題字のデザインはずっとご一緒したかった大原大次郎さん、製本は篠原紙工さんにお願いして、展覧会ではこの絵本をメインの1つにする予定です。

完成が楽しみです。ところで、亀山さんはどんなきっかけでムサビに進んだのでしょう?

僕の人生を変えた写真集があるんですよね。進路を考えていた高校生のとき、親戚のおじさんから南川三治郎さんという写真家の『アトリエの巨匠・100人』をいただきまして。ミロ、シャガール、ダリといった巨匠たちを口説き落として、本人のアトリエで撮ったポートレイトを集めたものなんですけど。

亀山さんが大切にしている南川三治郎さんの写真集。南川さんは20年かけて100人のアーティストを撮り集めたという
亀山さんが大切にしている南川三治郎さんの写真集。南川さんは20年かけて100人のアーティストを撮り集めたという

今考えれば、電子メールもない時代に日本人がそんなことをしていたこと自体すごいけれど、僕の目には写真集の中のアーティストたちが愉快に映って、「こういうおじさんみたいになりたい」と思ったんです。それでムサビに入ったものの、学生時代は毎日お酒を飲んで、野球などして遊んでばかりでした(笑)

野球ですか(笑)

当時は友人をつくるのに一所懸命で、真面目に絵を描く気持ちになれなくて。おかげで愉快な友達はたくさんできましたが(笑)

ただ、卒業制作だけは真面目につくり、エッチングで銅版が腐食する現象をモチーフにした映像作品を展示しました。制作に手応えを感じたし、周りが展示を楽しんでくれていたのもうれしかった。それに僕は学生時代から妙な自信もあったので、卒業後は就職しないでアルバイトをしながら制作を続けていました。

中川(敦子)と活動を始めたのは、そうやってフラフラしていたときです。タマビ(多摩美術大学)のテキスタイル出身の彼女と、クッションとかぬいぐるみとか手づくりの布雑貨を一緒につくっては、知り合いのお店やポップアップで展示販売をするようになって。

雑貨づくりは版画とは違う楽しさがありました。雑貨を気に入ってくれたお客さんと話したりしていると、僕らがつくったものが誰かの日常に溶け込んでいると感じられる。生活の中で使ってもらえることが心地良かったんです。

それでtupera tuperaの活動が本格的に始まるわけですね。絵本づくりを始めるきっかけは何だったのでしょう?

「絵本は興味ないんですか?」という声はよくもらっていたし、江口(宏志)さんがやっていたユトレヒトという本屋で古い海外の絵本に刺激を受けたり、絵本作家の五味太郎さん、ほかにもいろんな方との出会いがきっかけになって「面白そうだな」と興味を持つようになりました。

それで僕らにできる絵本って何だろうと考えて。物語を文章で読ませるようなものではなく、「飾って楽しめるような絵本はどうだろう?」というアイデアから生まれたのが『木がずらり』でした。

tupera tupera初の絵本『木がずらり』は「飾る絵本」がコンセプト。ページを繰って楽しむこともでき、屏風のように広げて楽しむこともできる。私家版をはじめPIE BOOKS、ブロンズ新社から流通版が出版された

蛇腹状になっているので、屏風のように広げて飾れる絵本です。自分たちで印刷所を探して、1000部限定で自費出版しました。10年くらいかけて大切に売っていこうと思っていたんですけど、うれしいことに半年ほどで売り切れてしまい……。

そんなタイミングで、「tupera tuperaの本を出したい」と言ってくれる方が現れ、『木がずらり』の復刊と新たに描き下ろした『魚がすいすい』の2冊を同時に出版しました。それから少しずつ絵本をつくる機会が増えていったんですよね。

たくさんの絵本を手がけられていますが、活動のターニングポイントになったような絵本はありますか。

僕らを知ってくれる人が増えたという意味では、コクヨの『かおノート』ですね。ちょうど中川が妊娠していたときで、生まれてくる子どもの顔を想像しているうちに「人の顔って面白いな」と改めて感じて、顔をテーマにしたワークブックを思いつきました。それでコクヨといえばノートのイメージがあったので「かおノート」という名前にしました。

重版を繰り返すほどヒットした初めての絵本だったし、僕たちの中でその後「顔」が大きなテーマとなっていくきっかけとなった1冊でもあります。新宿駅で歩きながらこの絵本で遊んでいる兄弟がいて、あれを見かけたときはうれしかった。でも “ながらかおノート” は危ないので真似しないように!(笑)

「かお」のベースとなるページに、付属されている目・鼻・口・ひげなどのシールを貼ったり、ペンや色鉛筆で描き加えて完成させる『かおノート』(コクヨ)。『かおノート2』『かおノートモンスター』とシリーズ化され、無印良品バージョンも出版されている

(笑)。お気に入りの絵本を挙げていただくと?

個人的にお気に入りの絵本は『わくせいキャベジ動物図鑑』(アリス館)です。地球から遠く離れたキャベツのような惑星に生息する「野菜動物」の生態を紹介する絵本で、トマトの体をした豚の「トマトン」とか、白菜にも見えるサイの「ハクサイ」とか、30近い野菜動物をつくりました。

制作には3年ほどかかり、スーパーで山ほど買ってきた野菜をいろんな角度で撮影して、それをもとに絵を描いて切って貼ってと大変な作業でした(笑)

tupera tuperaさんの絵本づくりは手作業の貼り絵が基本ですから、企画だけでなく、実制作にも相当な時間がかかるわけですもんね。

でも、絵本の挟み込みで「わくせいキャベジにいる動物を考えてみよう!」と読者に投げかけたら何千通も返事が来て、子どもから大人まで、発売から10年経った今でも新種を送ってきてくれる。ダジャレで終わらせてしまうようなことも、全力でつくればこれだけ響くのだと実感しました。

『パンダ銭湯』(絵本館)も構想から完成まで5年以上かかったという1冊。人気者のパンダの“秘密”が明かされる物語が話題を呼び、「街の本屋が選んだ絵本大賞グランプリ」などを受賞。韓国、台湾、フランス、中国などでも翻訳出版されている
『パンダ銭湯』(絵本館)も構想から完成まで5年以上かかったという1冊。人気者のパンダの “秘密” が明かされる物語が話題を呼び、「街の本屋が選んだ絵本大賞グランプリ」などを受賞。韓国、台湾、フランス、中国などでも翻訳出版されている

それで思うのは、僕らは雑貨をつくっていた頃から、つくったものをきっかけにみんなが笑って驚いたり、会話の輪が広がるようなものづくりをずっと続けているんですよね。

僕らのものづくりは人との出会いから始まっています。「アトリエに籠もって黙々とつくる」のではなく、「何か面白いことやりませんか?」という依頼に対して120%楽しく応えようとすると、自分たちの引き出しがどんどん開いていくんです。

広告や舞台、TV番組のアートディレクションなど活動は絵本にとどまらない。写真の埼玉県立小児医療センターのような施設、公共空間のアートワークも手がける
広告や舞台、TV番組のアートディレクションなど活動は絵本にとどまらない。写真の埼玉県立小児医療センターのような施設、公共空間のアートワークも手がける

共同作業だからこそ生まれるものがあると。

だから、先々の目標を立てないで、予想外の化学反応を起こすための余白を残しておく。自然体で、その時々に出会う人をじっくりと味わいながら、その都度ものづくりを楽しんでいきたいと思っています。

誰と出会い、これから先がどうなるのかわからないから面白いと思うんです。これを読んでくれているみなさんが、そういう “イレギュラーな日々” って大切なんだと気付いてくれたらうれしいですね。

あと、1人でものづくりをするのもいいけれど、僕らのようにユニットで活動するのもオススメです。ユニットだと、自分が思いついたアイデアを相方にぶつけてみると、思ってもみなかった面白い意見が返ってきたりして、さらにアイデアが変化するわけです。

そうやって2人で育てたアイデアが、「面白い、やってみましょう!」と言ってくれるたくさんの人たちと力を合わせることでもっと広がり、現実のものになっていく。そういうものづくりってとても楽しいですから。

2025年に出版された『超チョウ図鑑』(アリス館)は「ゼッコウチョウ」「シャチョウ」などチョウを超えた「超チョウ」84種が登場し、『わくせいキャベジ図鑑』の姉妹とも言えるユニークな絵本
2025年に出版された『超チョウ図鑑』(アリス館)は「ゼッコウチョウ」「シャチョウ」などチョウを超えた「超チョウ」84種が登場し、『わくせいキャベジ図鑑』の姉妹とも言えるユニークな絵本
亀山達矢

亀山達矢

KAMEYAMA Tatsuya

油絵学科版画専攻(現 グラフィックアーツ専攻)

tupera tupera

1976年三重県生まれ。武蔵野美術大学油絵学科版画専攻(現 グラフィックアーツ専攻)卒業。2002年より中川敦子さんとのユニット「tupera tupera」の活動を開始。絵本やイラストレーションをはじめ、TVや舞台、空間のアートディレクションなど、さまざまな分野で幅広く活動している。絵本など著書多数。海外でも各国で翻訳出版されている。受賞歴も多く『わくせいキャベジ動物図鑑』(アリス館)で第23回日本絵本賞大賞受賞。2019年に第1回やなせたかし文化賞大賞受賞。武蔵野美術大学油絵学科グラフィックアーツ専攻客員教授。

油絵学科グラフィックアーツ専攻

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