見つめつづける。
聞きつづける。
感じつづける。
学びつづける。
問いつづける。
迷いつづける。
試しつづける。
挑みつづける。
伝えつづける。
つくりつづける。
美はつづく。
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自分だけの視点で世界を見る。
毎日を豊かに楽しくするために。

unpis

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イラストレーター

unpisさんが基礎デザイン学科に入学したきっかけを教えてください。

絵を描くことが好きだったので、あるとき「イラストレーターになりたい。美大に行きたい」と親に相談したら、「イラストレーターは独学でもなれるかもしれないから、まずはデザインを勉強してみたら?」と勧められて。それがきっかけになってデザイン科を志望しました。

だから基礎デザイン学科でも初めはイラストをやりたいと思っていましたが、デザインの授業がとても面白かったんですよね。

例えば「アフォーダンス」。私たちが無意識に持っている感覚やみんなに共通している感覚を拾い上げて、気付いていなかったことを具現化する。「初めて見たけれどこれが欲しかったんだ」というふうに感じさせるのがデザインの役割、みたいな話にすごく影響を受けたし。

プロダクトの授業で、ある先生がおっしゃっていた「空間を色で捉えよう」という言葉は今でも思い出します。

「空間を色で捉える」?

コーヒーカップのモックアップをつくり、それを撮影してカフェのDMをつくるという課題で、写真の撮り方を教わるときに「部屋の角に沿って置かれたテーブルの上にコーヒーカップがあるとします。それを壁とテーブルとカップではなく、明度が違う3色のグレーと捉えて構図を見つけていきましょう」と先生が話されていて、「おぉー!」と思ったんです。

モノを意味ではなく色で捉えることで、世界の見え方が変わることを知った瞬間でした。それ以来、日常の中でも視点を転換することを意識するようになりました。

階段に落ちるギザギザの影や、ビルの窓に映る細切れの街のように、面白い、美しいと感じるものを見かけたらいまでも写真を撮ってストックしていますし、そういう視点が私の作風をかたちづくっていると思います。

『MY座標 / YOU座標』2024年キャンバスにアクリル絵の具、マーカー|333×333mm
『MY座標 / YOU座標』2024年
キャンバスにアクリル絵の具、マーカー333 × 333 mm

学生の頃はイラストを描いたり発信はしてたのですか?

趣味では描いていましたが、発信はほとんどしていませんでした。アニメーションやシルクスクリーンの授業で自分の絵で作品をつくって、友達から「いいね」と言ってもらうことがちょこちょこあったくらいで。

イラストを発信し始めたのは、岐阜で会社員をしていた頃です。ムサビを卒業してブランディングデザインの事務所でしばらく働いた後、日用品やプロダクトデザインに関わってみたくて、岐阜にあるメーカーにデザイナーとして再就職しました。

それで、岐阜で暮らし始めてしばらく経った頃、東京から遊びに来た友達が「SNSで投稿してみたら?」と勧めてくれたんです。そのひと言をきっかけにInstagramで投稿を始めたら、思いの外、評判をいただけて。フォロアーも増え始めたタイミングで、東京で初めての個展をやらせてもらいました。

そのときに「イラストレーターとしてやっていけるかもしれない」と感じたんですよね。思っていた以上にいろんな方が見に来てくださって、SNSで数字を見るよりもリアルに「自分の絵を本当に見てもらえているんだ」と思いました。個展をきっかけに少しずつお仕事をいただけるようにもなり、2020年の夏に独立しました。

イラストレーターとして幅広いジャンルを手がける。写真は、思わず「あれ?」と声を発してしまう意外な場面を描いた絵本『あれ?』(小学館)/-/撮影:河辺実優
イラストレーターとして幅広いジャンルを手がける。写真は、思わず「あれ?」と声を発してしまう意外な場面を描いた絵本『あれ?』(小学館) 撮影:河辺実優

unpisさんの作品集『DISCOVER』(グラフィック社)によると、作品はデジタルで描いたラフをもとにパネルに手描きしているそうですね。こうした手法に至ったきっかけは?

あ、それはiPadを購入したからで(笑)。確か最初の個展くらいまでは下描きも普通にアナログでした。当時はいろんな画材を試していて、ポスカで描線を描いた現在のようなイラストとか描線がない水彩とか、画風も入り混じっていたんですよね。

それで、個展に来てくれた方の反応やギャラリーの方の話を聞く中で「ポスカのような中太線がいいね」となって、太い線を基本にするようになりました。

画風以外のアイデア的なところで言えば、お仕事をやっていく中で私に求められていることが段々わかってきて。自分でも興味のあることや描いていて面白いことが影響し合い、今の表現になってきた感じです。

書籍から広告、パッケージ、店舗のアートワークまで、クライアントワークも幅広いですね。

おかげさまでだいぶ広がってきました。もともと日用品が好きでメーカーのデザイナーをしていたので、生活の中で使ってもらえるようなプロダクトや立体作品に展開できていることがとてもうれしいし、最近は企画のアイデア段階から相談をいただくことも少しずつですが増えてきました。

さまざまな方の知識や技術をお借りしながら、自分1人ではつくれないものを具体化していく作業が結構好きで。力を合わせて課題を解決したり、そこから生まれるアイデアをかたちにするようなやり取りがとても楽しんですよね。

『POSTER LIGHT(You are Light)』は福井の印刷会社サカエマークとのコラボレーション。ライトを点灯すると、人物の顔が現れる

unpisさんが携わった商品を見ていると、デザインの勉強をしてきた経験が生きているように感じます。

そうですね。見る人がどう思うのか、どういうふうに使うのかということを自然と意識していたり、それぞれのお仕事でしかできないような表現や体験を大切にしようと思えているのは、デザインを学んだおかげかもしれません。

だから、親が勧めてくれたことがきっかけでデザイン系に進んだけれど、基礎デザイン学科に入って良かったなって思います。卒業してからもグラフィックデザインやブックデザインをしている友達が多いので心強いし、実際に仕事につながっていくこともあるので、ありがたいですね。

陶磁器工芸メーカー中外陶園と共同開発した、犬や猫がモチーフの瀬戸焼のオブジェ。2025年9月にSTUDIO 894で開催された個展「BowWow Meow」で発表、販売された
陶磁器工芸メーカー中外陶園と共同開発した、犬や猫がモチーフの瀬戸焼のオブジェ。2025年9月にSTUDIO 894で開催された個展「BowWow Meow」で発表、販売された

クライアントワークの一方で、パーソナルワークも精力的に行っていますね。

パーソナルワークを続けていないと、自分が止まってしまうような感覚があるんです。クライアントから求められることを返していくだけになってしまうというか。

自分で展示をやるとなるとテーマ設定から考えることが多いので、そのときの自分が描きたいことと向き合う時間が取れます。そこから新しいアイデアや表現が生まれて、それがまた新しいお仕事につながったりもします。

最後に、美大を目指していたり興味を持っている高校生にメッセージをいただけますか。

先ほどお話しした、私が大学の授業をきっかけに気付いたような「自分だけの視点」を見つけてほしいと思います。

美大を目指している人ならすでに、色やかたち、質感みたいなものに興味があると思いますが、どうして自分がそれらに惹かれるのかを考えて、理解していくことが作品のオリジナリティにもつながると思うんですよね。それに、やっぱり自分だけの視点を持っている方が、毎日が豊かに楽しくなるはずですから。

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基礎デザイン学科

イラストレーター

福島県生まれ。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。デザイナーを経て、2017年頃からイラストレーターとして活動を始め、2020年9月に独立。書籍や雑誌、web、広告、パッケージ、店舗のアートワークなど、幅広いジャンルのクライアントワークを手がけるほか、個展やグループ展などパーソナルワークも積極的に行う。作品集に『DISCOVER』(グラフィック社)。絵本に『あれ?』(小学館)、『スーパーじっけんマシン アワサール』(福音館書店)など。

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